家庭用のお湯を沸かす機械としてメジャーなのは、エコキュートとガス給湯器の2種類です。この二つは、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。本記事では、エコキュートとガス給湯器それぞれの特徴と異なる点を解説します。ガス給湯器からエコキュートに交換する際に気を付ける点もあわせて解説するので、参考にしてください。
エコキュート/ガス給湯器の特徴
まずは、エコキュートとガス給湯器それぞれの特徴を見ていきましょう。
エコキュートの特徴
エコキュートとは、空気の熱を利用してお湯を作る給湯器の総称で、正式には自然冷媒ヒートポンプ給湯器と呼ばれています。エコキュートは、ヒートポンプ技術を取り入れた電気給湯器で、冷媒はフロンではなく二酸化炭素を使用しているのが特徴です。
この技術はエアコンにも利用されており、空気中の熱を効果的に利用して温水を生成します。エコキュートの動作原理は、ヒートポンプユニットで取り込んだ空気を圧縮し、圧縮することで熱を急上昇させるというものです。
この過程で得られた高温の熱は、水の温度を最大で90℃まで上げられます。温められた水は貯湯タンクに蓄えられ、使用時には適切な温度に調整されてから風呂やシャワー、台所などに供給されます。
エコキュートは電力を使用して空気を圧縮するため、同じ量のお湯を作るのに必要な電力は全体の約30%程度で済むのです。また、冷媒にフロンを使用しないため、環境への負荷が少ないという利点もあります。
エコキュートが主に夜間にお湯を作る理由は、夜間の電力料金が昼間よりも安く設定されているプランが一般的だからです。このため、エコキュートは夜間の安い電力を利用してお湯を作るように設定されており、これにより電気代の節約が可能です。エコキュートを使用する際には、夜間の電力料金プランに変更する必要があります。
ガス給湯器の特徴
ガス給湯器とは、ガスを燃焼させて発生した熱を使ってお湯を作る給湯器の総称です。ガス給湯器は水の通水によって作動し、蛇口を開けたり、お湯を使う際に自動的に作動します。内部ではガスが燃焼し、熱交換器を通じて水を温める仕組みです。
ガス給湯器はガスを利用して熱を生成しますが、そのためには電気も必要です。ガス給湯器が正常に動作するためには電気が不可欠であり、停電時にはお湯を作れません。しかし、最近では高効率なガス給湯器も登場しています。
エコキュートとガス給湯器の異なる点
エコキュートとガス給湯器には、いくつか重要な違いがあります。
給湯の仕方
ガス給湯器はガスと電気の両方を必要とし、瞬間沸かし式が主流です。蛇口を開けるとガスが燃焼し、その熱で水を瞬時に温めます。対してエコキュートは電気だけを使用し、すべての製品が貯湯式です。
空気の熱を利用して夜間にお湯を作り、貯湯タンクにためておきます。エコキュートは効率的にお湯を作れるため、光熱費の節約が可能です。
本体価格/設置費用
エコキュートの本体価格は約40万円から70万円で、設置費用を含むと高額です。モデルにはフルオートタイプ、オートタイプ、給湯専用タイプがあり、メーカーによって価格は異なります。
一方、ガス給湯器の本体価格は約15万円から40万円と比較的安価です。ただし、追い炊き機能やその他の機能により価格が変わります。
光熱費
エコキュートは電気と空気の熱を利用してお湯を作るため、光熱費を非常に安く抑えられます。ガス給湯器からエコキュートに切り替えることで、年間おおよそ4万円~7万円の節約が期待でき、10年で光熱費を回収する可能性があります。
サイズ
エコキュートは貯湯タンクとヒートポンプユニットがセットになっており、横幅600mm/奥行750mm/高さ1800mm以上のサイズが必要です。設置場所によってはスペースの確保が難しい場合があります。
ガス給湯器は瞬間沸かし式の場合、サイズが横幅350mm/奥行250mm/高さ600mm以上とコンパクトで、設置が容易です。
水圧
ガス給湯器は水道水の圧力でそのまま使用できるため、500KPa程度の水圧が確保されます。対して、エコキュートは貯湯タンク内にお湯をためるため、水圧が低く、標準で290KPa前後です。最近のエコキュートでは水圧が改善されていますが、ガス給湯器よりは低めです。
寿命
ガス給湯器の寿命は約10年であるのに対し、エコキュートは約10年~15年とされています。エコキュートの方が、長持ちする傾向にあるでしょう。
飲用水
ガス給湯器で沸かしたお湯は、飲用に適しています。しかし、エコキュートは貯湯式のため、飲用には適していません。エコキュートのお湯を飲用水として使用する場合は、煮沸することをおすすめします。
安全性
ガス給湯器はガスを燃焼させるため、火災のリスクがあります。一方、エコキュートはガスを使用しないため、火災のリスクは低いです。また、停電時にはエコキュートの貯湯タンクにお湯を残していれば利用可能です。
補助金
エコキュートは省エネ性能が高いため、政府や地方自治体の補助金制度が充実しています。例えば、経済産業省の給湯省エネ2024事業や東京都の東京ゼロエミポイントが利用可能です。ガス給湯器は、省エネモデルだとしてもエコキュートほど補助金制度は充実していません。
ガス給湯器からエコキュートに交換する際に気を付けること
ガス給湯器からエコキュートに交換する際の注意点は、以下の2点です。
湯切れのリスク
エコキュートは貯湯式の給湯器で、夜間にお湯を沸かして貯めておきます。しかし、お湯を使いすぎると湯切れが発生する可能性があります。このため、使用量に注意し、計画的にお湯を使うことが重要です。
電気代の変動
エコキュートに切り替えると、電気代が高くなる可能性があります。これは、エコキュートに合わせて季節別時間帯別電灯などの料金プランに変更することがあるためです。このプランでは、電気料金が時間帯や季節によって変動します。
たとえば、日中の料金が高くなることがあるため、日中に多くの電力を使用する家庭では電気代が高くなる場合があります。現在の料金プランと比較し、必要に応じて太陽光発電システムや蓄電池の導入を検討することもおすすめです。
まとめ
本記事では、エコキュートとガス給湯器を徹底比較しました。エコキュートは空気の熱を利用した電気給湯器で、夜間の安い電力を使って効率的にお湯を作り、光熱費を大幅に削減できます。一方、ガス給湯器はガスと電気で瞬時にお湯を沸かし、設置がコンパクトで光熱費も安定していますが、ガスを使用するため火災リスクがあります。エコキュートは高額な本体価格がネックですが、長寿命と補助金制度が魅力です。エコキュートとガス給湯器のどちらか選択する際は、光熱費の節約、設置スペース、電気料金プランなどを考慮することが大切です。